ずっと消えない約束を、キミと〜雪の降る海で〜
「渚……。ちょっといいか?」


低い声で訊きながら、お兄ちゃんが部屋に入って来た。


珍しく、いつもよりも1時間以上も遅く帰宅したお兄ちゃんは、まだ着替えも済ませていなくて……。


服に染み込んだオイル独特の匂いが、部屋中に広がった。


作業の時はツナギを着ているけど、きついオイルの匂いはどうしても私服にも移ってしまうんだ。


「……母さんがリンゴだけでも食えってさ」


「食欲ないから……」


首を小さく横に振ると、お兄ちゃんは持っていたお皿をベッドサイドの小さなテーブルに置いて、ため息をついた。


< 117 / 500 >

この作品をシェア

pagetop