それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
根岸先輩は、わたしを押しのけ、
「今のうちに逃げろ!」
と、叫びながら、もう一人の男に殴りかかっていた。
喧嘩の現場と根岸先輩の迫力に圧倒されてしまって、その場から動けずにいると。
「ひな!行くぞ」
根岸先輩はわたしの腕をぐいっと掴んで全速力で走りだした。
どきっ。
今、ひな、って呼ばれた。
「この野郎!」
後ろから男たちの叫び声が聞こえる。
どきどきしてる場合じゃなかった。