それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「な、なんでもないです。やだ、わたしったら、なんで……」
なんとか笑ってごまかす。
すると。
ふわり。
根岸先輩の腕が、わたしを優しく包み込んだ。
……え?
「……泣くなよ」
頭の上で、少しぶっきらぼうに言った。
「……街中で泣きっ面なんて、見られたくねぇだろ?」
そう言って、わたしの頭にそっと手を回した。
先輩。
泣き顔を見られるのも恥ずかしいけど。
街角で抱き合ってるのだって、十分恥ずかしいよ。
だけど。
嬉しくて。
根岸先輩の腕の中から、離れられなかった。