それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「あの建物です」
放課後、前にあやめちゃんとテナントビルをのぞいていた場所に、浅野先輩といた。
そのいかがわしい看板がたくさん掲げられているテナントビルを眺めて、浅野先輩は盛大なため息をついた。
「あいつ、こんなとこでなにやってんだ」
浅野先輩の疑問は、ごもっともなわけで。
「……オレさ。よく考えてみたら、あいつのこと、なんにも知らないんだよな」
テナントビルを眺めたままぽつり呟いた。
「え?」
「しょうもない会話はいっぱいするけど、あいつのプライベートなことだとか、全然知らない。
人が信用できないって台詞聞いて、あいつ……オレのことも信用してなかったのかなぁって」