それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「そんな……」
「ったく、つまらない野郎だ。もっと部長様を信用しろよな。けっこう頼りになるんだぞ」
浅野先輩は、そのテナントビルを見つめたまま苦笑していた。
とても、寂しそうに。
「教えてくれてありがとう」
「いえ……」
「さぁ、もう帰ろう。ここは制服姿でうろうろするようなとこでもないしな」
「はい……」
そのビルに背を向け、歩き出そうとした時だった。
思わず人にぶつかりそうになり、「すみません」と頭を下げると。
「あ」
女性の低い声がした。