それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


「そんな……」


「ったく、つまらない野郎だ。もっと部長様を信用しろよな。けっこう頼りになるんだぞ」


浅野先輩は、そのテナントビルを見つめたまま苦笑していた。


とても、寂しそうに。


「教えてくれてありがとう」


「いえ……」


「さぁ、もう帰ろう。ここは制服姿でうろうろするようなとこでもないしな」


「はい……」


そのビルに背を向け、歩き出そうとした時だった。


思わず人にぶつかりそうになり、「すみません」と頭を下げると。


「あ」


女性の低い声がした。

< 188 / 305 >

この作品をシェア

pagetop