それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
夏休みに開催される、市主催の「アート・ウェーブ」。
若手アーティストのみの展覧会で、我が桜阪(さくらざか)高校美術部も毎年出品している。
出品に向けて、部員たちは最後の追い込みに入っていた。
「佐々木は早々に描き上げてたからいいにしろ……」
浅野先輩は筆を走らせながら、独り言を呟く。
「根岸はどうするんだろうね。最近めっきり顔出さないし、今まで描いた作品で出品するのかな」
生川先輩はわたしの斜め後ろで、腕を組んでいる。
ほんと、どうするんだろう。
……それ以前に。
どうしているんだろう。
元気にしているのかな……。