それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
結局、根岸先輩は一向に美術室に顔を出さないまま、「アート・ウェーブ」に出品する絵の搬入日になってしまった。
搬入は、部長の浅野先輩と副部長のみさと先輩が担当してくれることになっていたけれど、現場を見たくてわたしも同行させてもらうことになっていた。
顧問の先生の車に作品を乗せて、会場へ向かう。
その中に、根岸先輩の作品は、なかった。
「桜阪高校美術部です。全部で四点です。お願いします」
会場受付で作品を引き渡す。
「はい。……あ、じゃあ全部で五点ということですね?」
「え?」
浅野先輩は眉をひそめた。
「先ほど、一名受け付けいたしましたので」
受付のおばさんの一言に、わたしたちはぱっと目を見開き。