それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「ふぅ……」
気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。
根岸先輩はいつも、緻密で繊細な絵を描いていたじゃない。
どこまでネガティブ思考なの、わたし。
……もし。
もし、仮にショックを受けるような絵だったとしても、それが今、根岸先輩が描ける絵なんだから。
絵が描ける、絵を出品できる、という状態であることが、なによりも大切なことなんだから。
「大丈夫」
ぼそりと呟いたその声は、電車の音でかき消された。