それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「あ」
根岸純という名前を見るだけでトクンと胸が音を立てる。
そして、その隣り書かれている作品のタイトルを見て、思わず息を飲んだ。
わたしは、展示されている最優秀作品なども全部すっ飛ばして、根岸先輩の作品を探した。
まるで、根岸先輩本人を探しているような感覚で。
作品一つ一つをじっくり吟味しながら鑑賞している人たちが、早足できょろきょろしているわたしを振り返る。
そして。
わたしは部屋の隅に展示されているその作品の前で立ち止まった。
それを見たとたん、思わず手で口を覆ってしまった。
胸の奥の方から溢れてくる熱い気持ち。
あっという間に目から涙が溢れていた。