それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


「あ」


根岸純という名前を見るだけでトクンと胸が音を立てる。


そして、その隣り書かれている作品のタイトルを見て、思わず息を飲んだ。


わたしは、展示されている最優秀作品なども全部すっ飛ばして、根岸先輩の作品を探した。


まるで、根岸先輩本人を探しているような感覚で。


作品一つ一つをじっくり吟味しながら鑑賞している人たちが、早足できょろきょろしているわたしを振り返る。


そして。


わたしは部屋の隅に展示されているその作品の前で立ち止まった。


それを見たとたん、思わず手で口を覆ってしまった。


胸の奥の方から溢れてくる熱い気持ち。


あっという間に目から涙が溢れていた。

< 230 / 305 >

この作品をシェア

pagetop