それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「うそ……」
そこに描かれていたのは、わたし。
わたしの、横顔。
制服を着ている上半身のわたしは、やわらかい表情で誰かに微笑みかけているようだった。
本物よりずっと、優しく温かい笑顔で。
しっかりその絵を眺めたいのに、涙で滲んでぼやけてしまう。
だって。
だって、先輩の人物画、初めて見たんだもの。
こんなにやわらかい優しさに溢れた絵なんだもの。
しかもそれが、わたしだなんて。
しかもわたしが、「希望」だなんて。
信じられなくて、作品の下に掲げられているタイトルを何度も確認してしまう。
そこには確かに『希望 根岸純』と書かれていた。