それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
胸がずきんずきんと痛む。
傷だらけの根岸先輩を知ってしまったから。
もがいて苦しんで必死で生きてきた根岸先輩が、かすかに抱いた希望がわたしだったのだとしたら。
それはあまりに純粋で透明な思いなような気がして、足がすくんでしまいそうになる。
わたしなんかで、本当にいいの?
わたしは、先輩の光になれる?
希望になれる?
……ううん。
わたしはそんな、大それたものにはなれないよ。
だけど、先輩の隣りにいることならできる。
先輩の隣りに、いたい。
会いに行かなくちゃ。
その気持ちだけで会場を飛び出していた。