それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


肩で息をする。


目の前には、例のテナントビル。


学校以外で根岸先輩がいそうな場所は、ここしかわからなかった。


日曜の午後ということもあって、歓楽街は平日の夕方に比べれば閑散とはしていたけれど、相変わらず抵抗感のある看板の数々を前にひるみそうになった。


改めてあやめちゃんのことを思い出す。


友達のために、わたしのために、この中へ一人で入っていった勇気は、本当にすごいと思う。


逆の立場なら、わたしに同じことができたのかな。


やるときはやるあやめちゃんが、ものすごく格好良く思えた。


ショルダーバッグの紐をぎゅっと握り、覚悟を決める。


「よし」

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