それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
はね返されると思いながら下ろした取っ手は、思いが通じたのか下までぐっと下がり、そっと扉を開けると蝶番(ちょうつがい)がきぃぃと少し音を立てた。
望んだとおり扉が開いたのに、そのことに少しびっくりしてしまい。
そうっと店内をのぞくと、そこには誰もいなかった。
カウンターだけの小さなお店だったけれど、木目を基調とした店内はレトロな雰囲気で感じのいいお店だった。
「あの~……すみません」
おそるおそる声をかけると、奥から「あーちょっと待ってねー」と男の人の声がした。
この声の人が「おやじさん」なのかな。
そのわりにはずいぶん軽い調子の声だな。
「はい、お待たせ」