それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


ひょっこり顔を出したのは、すらりと長身の茶髪の男性だった。


確かにおじさんではあったけれど、耳にはピアスもしていてとても若々しくて格好いい人だった。


根岸先輩がおやじさんって呼んでいたし、洋食屋の主人と聞いていたから、勝手に「くまさん」のようなイメージを抱いていただけに、自分の想像とかけ離れていて少し面食らってしまった。


「いらっしゃい。ごめんねーせっかく来てもらったんだけど、今日は定休日なんだ」


腰にひっかけたタオルで手を拭きながら申し訳なさそうにするので。


「あ、違うんです、その……根岸純さんって、こちらにいらっしゃいますか?」


おそるおそる尋ねると。


「ああ!純の友達か。純、今ちょっと買い出しに行ってるんだ。もうすぐ戻ると思うから、掛けて待っててよ」


そう言うと、おやじさんはにっこり笑った。

< 237 / 305 >

この作品をシェア

pagetop