それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


「嬉しいこと言ってくれるねぇ」


「本当においしいですから」


口をもぐもぐと動かしながらも、つい顔がほころぶ。


「そんなふうにおいしそうに食べてもらえると、こっちまで幸せになれるね」


おやじさんは、目を細めてにっこり笑った。






ああ。


この人と一緒にいたら、安らぐだろうな、とふと思った。


この人は懐の深い人だ。


優しさと思いやりに溢れている。


だけど、荒れている根岸先輩に手を差し伸べることができたのは、優しさだけじゃなくて、覚悟もあったはず。


この人は、きっと強くもある人だ。


だから、きっと、根岸先輩はおやじさんのことを素直に尊敬できるんだ。

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