それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
それはわたしも同じで。
会いたい一心でここまでやって来たにも関わらず、いざ本人を目の前にすると、緊張して体がかちこちになってしまっていて。
さっきまでのおやじさんとの和やかな時間が、まるで嘘のように一気に緊張の頂点に達してしまった。
そんな二人の様子にお構いなく、おやじさんは「お帰り。お疲れ」と普通に声をかけた。
「純に用があるんだってさ」
「あ、す、すみません。こんなところまで押しかけてしまって、その……」
「僕、もう帰るから、純、片付けと鍵、頼んだよ」
「え?新メニュー作りはもういいのかよ?」
「この子に太鼓判もらったからOKOK。じゃあな」
おやじさんは腰にひっかけてあったタオルを引っこ抜きながら奥から出て行ってしまった。