それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
ガチャリと裏の金属扉が閉まる音が響く。
そして、店内はしんと静まりかえってしまった。
微妙な空気が二人の間に流れる。
え、えっと……。
ど、どうしよ……。
なにをしゃべったら……。
「それ、うまかったか?」
根岸先輩は買い物袋をカウンターの奥へ置きながら、わたしの前にある抹茶のシフォンケーキに目をやった。
「あ、はい。とっても」
「どれ」
そう言って、わたしがさっきまで使っていたフォークで、食べかけのシフォンケーキを口に入れた。
「んー、抹茶だな」
「はい」
「俺、実は抹茶苦手なんだよな」
そう言うと、ぺろっと舌を出して、水を流し込んだ。