それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「え!うそ!?もっと若いと思った」
45歳って、自分の父親とそう年齢変わらないじゃない。
そう考えると、おやじさん、すごく格好いい。
そして、おやじさんと呼ぶのがなんだかはばかられる。
「それに、あれで実はけっこうな苦労人らしい」
「そうなんですか?」
「ああ。親は会社の役員だったらしいけど、中学の時に会社が倒産して。借金が原因で一家離散して、親戚に育てられた、ってあっけらかんと言ってたよ」
「そうだったんだ……」
あんなに穏やかで優しそうな人が、そんなつらい経験をしていたなんて。
だけど、だからこそ、強くて優しいのかもしれない。
だから、荒れていた根岸先輩に手を差し伸べられたのかもしれない。
「で。俺に用って?」
突然本題を振られて、一瞬思考が止まってしまった。