それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「でも、振られても、好きな気持ちは消せなくて。誰のものにもなってほしくなくて……あんな噂流したの。だけど……」
そう言って、わたしの顔をちらりと見た。
「今年はひなちゃんが入部した。……正直、なんで、って思ってた。……根岸くんに近づかないでって思ってた」
みさと先輩の言葉ひとつひとつが胸をえぐる。
どれだけ、わたしが疎ましかっただろう。
それなのに、私に優しく接してくれていたみさと先輩は、あれは、偽者だったのかな。
いい人を演じていたのかな。
「だけどね。ひなちゃんと根岸くん見ていて、ああ、私に足りなかったのはこれだったのかな、って気づいたの。だって、ひなちゃん、根岸くんに普通に反論するんだもん」
みさと先輩は、くすりと笑った。
「はあ……」
なんとも間の抜けた返事。
イライラするから反論していただけなのに、そんなふうに見られていたなんて。
全然知らなかった。