それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


「……根岸くんの絵を見てね。踏ん切りがついたの」


その一言に、どきんとした。


先輩、やっぱりあの絵、見たんだ。


どう思ったんだろう。


みさと先輩にとっては、他のどの絵よりも残酷なものだったに違いない。


思いのつまったものは、場合によってはひどく人を傷つけるものでもあるんだ。


「私も出直そうって。だから……

 ひなちゃんにとってはいい迷惑だろうけど、ざんげしようって思った。

 ……だって、根岸くんも一歩前に進んだんだから」


「え……?」


「根岸くん、人物画は描かない人だったのに。突然、あんな絵を描いてみせるんだもん。……ずるい」


やっぱり、本当だったんだ。


人物画を描かないってこと。

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