それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「ひなちゃん。ありがとう……」
思いも寄らなかった言葉に、きょとんとしてしまう。
「ひなちゃんが、美術部に飛び込んできてくれたおかげで、私、前に進もうってやっと思えるようになった。
卑怯なことしても、妬んだりしても、結局なんにも満たされなかったし……自分のことがどんどん嫌いになるだけだったから。だから……」
ありがとう、そう言って、みさと先輩は頭を下げた。
「そんな、だって、わたし、なんにもしてない……ほんと、わたし……」
慌ててぶんぶんと首を横に振る。
「……かわいい後輩がいてくれて、よかった」
ふと顔をあげたみさと先輩は、わたしの知っているみさと先輩だった。
ふんわりと優しい笑顔を浮かべていた。
だけど。
頬に一筋、涙が伝っていた。