それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


そう。


あの日は早く結果を知りたくてつい走っちゃって。


で、校門のレールに足を引っかけて、かなり派手に転んじゃったんだ。


「合格発表見る前に転ぶなんて、どんだけ縁起悪いんだこいつ、って思って見てた」


そう言って、先輩はフッと鼻で笑った。


「……なんか、感じ悪いですね」


「で、気になったんだよ。この縁起の悪い子はちゃんと合格できたのか」


「はあ……」


「膝すりむいて痛そうな顔しながら、一生懸命自分の番号探して。

 で、今度はいきなりぱぁ~っと明るい顔すんの。かと思ったら今度はちょっと涙ぐんでさ。

 それ見て、あ、受かったんだな、って思った。さすがに俺も安心したよ。豪快に転んでその後試験にもすべってたら、ほんと、痛すぎるからな」


先輩はけらけらと楽しそうに笑っているけれど。


ほんと、あの時、不合格だったら、笑えなかったよ。どん底だったよ。


合格したから、転んだ痛みもどっかにいっちゃったけど。

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