それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜


着信画面を確認すると、口の中のものを慌てて水で流し込み、相手には見えないのに口まできちんと拭いた。


「あ、みかちゃん。電話ありがとう。めっちゃ嬉しい」


あ。


営業用の声だ。


「あーごめんねぇ、その日はダメなんだー。めっちゃ残念!俺もみかちゃんと行きたかったのにぃ」


ものすごく残念そうにしているけど。


「ごめんねー。じゃあ、あさってだったらどう?みかちゃんのためなら俺、時間作るし」


まったくよく言うよ。


それが仕事とはいえ誰にでもそう言ってるあんたを見ると、ますます人間不信になる。


「じゃ、あさってね。よかったー!みかちゃんと会えるの楽しみにしてるからね」


電話を切ると、一仕事終えたサラリーマンのようにふぅと息を吐き出し、「あさって、みか同伴、っと」と呟きながら携帯にすばやく予定を打ち込んだ。

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