それから。〜不機嫌な先輩と不器用恋愛〜
「心配すんな。これくらいは払えるわ」
「え?ち、違います。ほんと、そんなおねだりのつもりで言ったんじゃないですからっ!先輩、行きましょ、ね、ね?」
そう言ってひなは俺の手を引き、その店から逃げるようにスタスタと歩いた。
「気にすることねぇのに」
「だって……ただ単にかわいいって思っただけだったから……」
……。
ということはつまり。
さっきのクローバーの指輪は、かわいいを連発していたもののうちの一つにすぎなかっただけってことか。
……紛らわしい。
思わずため息が漏れた。
「ごめんなさい……」
俺のため息を聞いて、俺が機嫌を損ねたとでも思ったのか、ひなは少し不安げな表情を浮かべていた。
「お前が謝る必要ねぇだろ」
ひなの頭にぽんと手を置くと、安心したのかひなの顔に笑みが戻った。
かと思ったら今度はなにやらもじもじし出して。