夜嵐
エレベータの扉が開いた。
中には誰もいない。
きっと、4階で降りたのだろう。
中に入り、『1階』のボタンを押した。
静かに閉まる扉と同時に、仕事に一区切りついた。
1階に着き、ロビーに向かった。
外は強い光に晒されていた。
玄関を出ると、サラリーマンやOLの人間達が歩いている。

「はぁ~・・・」

再び溜息をついた時、内ポケットに忍ばせておいた携帯が振動した。
マナーモードにしていたため、音は出ない。
ただ、振動で着信を知らせるように設定をしていたためだ。

「もしもし、Kか」
相手の名前を言った。

「Y.こっちは取引に合意した。
そっちはどうだ」

「失敗だ。相手が悪かったようだ」

「了解。Uに連絡する」

威勢のいい、Kの音声が耳に響く。
よっぽど嬉しいのか。

「ああ、任せる」

これ以上の会話は無意味だと考え、通話を切った。
空を見上げると、日差しの強い太陽が視界に入った。
正直、眩しい。
太陽から視界を逸らすと、俺が今まで居たX社が見える。

「ゲームオーバー」

誰にも聞こえないように、小言で言った。
その一言は、この会社の未来を見据えた事とは、誰一人気づくこともないだろう。
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