夜嵐
―――地下鉄構内
職場へ戻るため、電車を待っていた。
今日の仕事は終えた。
『X社』と『Z社』に情報を流し、どちらかの企業を社会から抹消する。
それが今回の仕事だ。
全ては一瞬で終わる。
それは訪問先を出た瞬間だ。
『Yes/No』の二択で、何万人もの社員の未来を壊す。
何も知らず、真面目に働く者、上を目指し、働く者。
彼らの夢と未来を破壊した。
電車がホームに到着した。
すでに乗客が乗っている。
席は空席が目立ち、俺は座席に座った。

「はぁ~・・・」

溜息が出た。
無駄足を踏んだ。
今回の仕事は『X社』と『Y社』で交わされた『武器輸送』に関する情報を世間に流すものだ。
我が国、『日本』では、2145年を境に『世界大戦』が勃発した。
きっかけは単純だ。
『国』と『国』との小競り合いが周りの『国』を巻き込み、大きくなり、『世界大戦』へと進んだ。
拡大しすぎた『人口増加』、国々が抱える『問題』を『世界大戦』で解決しようとしたためだ。

20年にわたる『世界大戦』の末、我が国の介入した『連合軍』は勝利を収めた。
だが、『勝利』を得たところで、何も残らない。
人口は半数へ減少し、住む家や燃やされた。残った物は『契約書』だ。
国の領土・連合軍の仲間等、法の改正なしでは使用できない『契約書』、つまりは『紙一枚』のために戦っていた。
我々は、その『紙一枚』のために戦ってきたのか。
答えはYesだ。
いいや、言葉を間違えたか。
『契約書』には国の未来が描かれている。
我々は『未来』のために戦っていたのだ。
世代を超え、時を超えても、皆が笑顔で住める国を目指すため。


『世界大戦』から30年、現在―――
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