カラス君と黒猫さん2
「いつも一緒に居る人しか分からない、“自分のこと”もあるんだよ」
ぽんぽん、と頭を軽く撫でられた。
まるで、大人が小さい子供をなだめる様に。
「んー・・・そうかもしれない」
当麻君の顔が頭を過ぎった。
一方的で勝手に私が当麻君を振り切った。
それは確かなんだ。
でも、悪い事をしたとは思ってない。
だって兄さんに抱かれるのっておかしい気がする。
そんな関係、やめてよかったんだ。
「たまにね、黒猫さんをどうしようもなく抱きたい時があるんだ」
思わず咽込んだ。
今、衝撃的事実を言った。
カラス君を見上げると、いつもの優しい笑顔のまま。
「でもまだ、抱かない。だって黒猫さん、強がってるけどそう言うの、怖いでしょ?」
核心をつかれた気がした。
何も言ってなかったのに、感ずいてたんだ。
(確かに、できれば避けたい道だと思ってた)
何も言えなくて、ただ頷く。
そしたらカラス君は、笑顔のままで私を抱き竦めた。
熱出してるからなのか、いつもより何倍も熱い気がする。
きっと今私、顔赤いんだ。
優しく頭を撫でてくれる感触だけ、伝わった。
「いいよ、それで。それが黒猫さんなんだ」
その言葉が、じんわりと体に広がる。
何か、泣きそうになってきた。
絶対泣かないけど。