カラス君と黒猫さん2





その日は、暑い真昼だった。

窓を見ると、道路で陽炎が踊っている。
私は陽炎が不気味で、小さい頃から嫌っていた。




『父さんが倒れたって・・・・・・』


電話を置いた母さんの顔は、今でも頭にこびり付いている。




暑い、じめじめした嫌な夏。


不気味なくらい涼しい病室に入ったとき、私は言葉を喋れなかった。




『アルコール中毒です。体内に消化しきれなかったアルコールが大量に確認されました。』



淡々と、重いように喋る医師が話したのは、紛れも無い“死因”だった。



白いベッドに横たわるのは、動かない、父。








< 42 / 87 >

この作品をシェア

pagetop