カラス君と黒猫さん2
駅で切符を買い、人が少ない電車に乗り込む。
電車内ってあったかいから好き。
椅子に座り、がたがたと揺られて、寝そうになったとき。
「・・・・・・・・あれ、琴羽?」
どきり、と心臓が高鳴った。
聞き覚えのある声に勢い良く顔を上げる。
「何でこんな時間に・・・って、バイトか」
どく、どく、心臓がうるさい。
「・・・・当麻、くん・・・・・」
「久し振り」
真正面の吊革に手を掛けて、優しく笑うその人は、以前より雰囲気が少し丸くなった当麻くんだった。
「何でここに?」
「うん、最近大学行きっぱなしで家に帰ってないんだ。帰ろうと思って」
「あ、そうなんだ・・・・・・」
よし、いつもの私に戻ってきた。
当麻くんとは、もう何の関係も無いんだから別に焦らなくてもいいんだ。
「それどうしたの?」
当麻くんが片手にぶら下げているレジ袋を指差した。
「ん、これ?今日の晩飯。鍋にするつもり」
「当麻くんって鍋多いよね」
「楽だからねー」
久し振りに見る、当麻くん。
私と同じ黒髪で、身長の方は似ても似つかない位当麻くんの方が高い。
きっと当麻くんのお母さんは背が高い人だったんだろうな。