カラス君と黒猫さん2
「琴羽には悪い事したね。俺が子供だったせいで」
「・・・ううん、難しいんだよ、ここの家は。母さんと当麻くんが仲良くやってるなら、それでいい」
父さんと、母さん。そして、私。
家族四人の中で、当麻くんだけが自分の存在に引け目を感じていた。
そんな当麻くんは見てられなかった。
「・・・・・・当麻くんは、今、楽しい?」
心の声が零れたみたいに聞いてみた。
「・・・うん、楽しいよ。視野が広がったんだ」
「視野?」
「今、大学で色んなことを勉強してるんだ。言語とか、歴史とか、そう言うの。やっぱり勉強すると世界観が変わるね」
「・・・・・・ふうん」
「琴羽は?」
低い当麻くんの声が響いた。
「楽しいよ」
“運命”って、結局自分が選んでるのかもしれない。
選択肢はいくつでもある。
その中の何を選ぶかによって、自分の“運命”は選べるんだ。
私は、当麻くんを切り捨てて、カラス君と過ごす選択肢を選んだ。
「琴羽のことがずっと好きだった」
「うん」
「女として、人間として」
「・・・・・うん」
今なら、当麻くんに“本当の私”が言えるかもしれない。