フラスコ小世界
フラスコなんて
僕には見えない


そう告げると

彼女は
両手を広げて言った

自分には分かると

外には研究者がいて
自分達を始終観察しているのだと


「だから私はいつだって
恥ずかしくないよう行動するの。

家の中でも毎日お化粧、
いつでもきれいな洋服を着るわ。

だからあなたも、友人として
恥ずかしくない生活をしてね」


彼女の声は
夏の日差しのように
確信に満ちている


ああ君は
見えない研究者を気にするのか

君の隣には
僕がいるというのに


君の目は
フラスコの外を見つめたまま
離れない



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