恋人は王子様!?



「ゥ…ゥワ!」


急に車が止まった。

「な、何なんですか?危ない」


「……」


「こ、こんな所に止めてどうしたんですか?」


「……」


「先生?」


「菫…」


「はい?」


「そんなに俺が嫌いか?」


「…はぁ?」


「嫌いかって聞いてるんだけど」


「……」


「菫」


「わかんない」


「ん?」


「裕ちゃんは私にとって憧れで、優しいお兄ちゃんだった。だ、だけど…あの時…裕ちゃんに…あんな風に思われてるなんて…夢にも思ってなかった」


「あれは」


「それから今度会ったら先生だし、前と全然違うし…わかんない。今は蓮見先生だよ。裕ちゃんじゃない」


「…ふぅ~」


「送ってくれないなら此処で降りるね。ありがとうございました」


シートベルトに手を掛けたら


…ぇ?


その手に手を…


「降りなくていい。送るから」


「……」


車をスタートさせた。


――





家の前―


「ありがとうございました」


シートベルトを外し降りようとすると


「菫」


「……」


「俺…諦めないから。お前を振り向かせるから…お前は…俺の姫だから」


「先生」


「先生じゃなく前みたいに『裕』って呼ばせるから」


「……」


怖いくらいの瞳。



車を降りて


「今日は無理せず、ゆっくり休め、試験も近いからな」


私が何も云う間もなく、先生は走り去った。


私はしばし茫然と遠ざかる車を見送ってた。



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