恋人は王子様!?
「じゃあ『裕』って」
「先生って呼びます」
「…さっきは『裕ちゃん』って呼んだのに」
「あ、あれは…その…」
あたふたしてるし。
あまりに可愛いので抱きしめようとすると、するりと逃げて
「だ駄目です。学校ですることじゃありません」
「…菫」
俺がよほど不服そうな顔をしたのか
「先生、我慢して…じゃないと、先生の補講を受けられなくなる」
目をうるうるさせて…
「それは駄目だ。俺がお前を大学に受からせる」
せめてもの罪滅ぼしだ。
「だから…ね。先生に…だ、抱き寄せられたり…したら…勉強が頭に入らない」
赤くなって俯いた。
「……」
「……」
「分かった、分かった」
顔を上げ、ニコリと微笑む。
「ありがとう」
「ん」
頭を撫でようとすると、またスルッとかわし
「じゃあ 失礼します」
「でも、暗いぞ」
「大丈夫。野崎先生が送ってくれるって」
「…野崎先生?」
「はい。じゃあ さようなら」
部屋を出て行った。
……
…
今までと変わり無しかよ。
思いが通じたのに…
キスどころか、手も触れないのかよ。
それに野崎先生…
俺のライバルが先輩の恋人って…
菫の『好き』ってのは…俺の『好き』とは違うのか?
俺、ほんとなら幸せいっぱいのはずなのに…
何故か…落ち込んでる。
菫が卒業するまでって
後、五ヶ月もあるぞ。
……
…
大丈夫か、俺?
*蓮見裕則side 終*