優しいなんて、もんじゃない
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滝さんが店に訪れてから4日経った。弥生さんは、いつも通り豪快な笑顔を浮かべてカウンターにいるお客さんと会話していた。
私も何時も通り、決まった時間にピアノを弾いて雑用を手伝っていた。
何も、変わらない。
昨晩の滝さんから誘われた助手の話も、弥生さんの涙も、まるで夢だったみたいに。
あまりにも何も変わってなさすぎて、己の記憶を疑うくらいにだ。
と。
カランカラン、カウベルの音が店内に響き来客を知らせる。ゆっくりとそちらに視線を向け弥生さんに続いて「いらっしゃいませー」なんて。
「……あ?」
「……あ。」
明らかに向こうの「あ」は嫌悪を孕み威嚇的で。苛っとさせられる。何だお前やんのか。
来客の正体は、先日ユウを街中で怒鳴り散らしたあのセンター分け。
会ったばかりで啖呵を切ってきたあのセンター分けだ。
「何でお前がいんだよ、優。」
「あんたこそ、仕事しろよ…藍。」