優しいなんて、もんじゃない




それ位、大勢の人の目に見られるのは嫌い。気分が悪い。


自然に寄り始める眉。睨んでると思われたのか美月さんは「ごめんね」と一言、謝罪をして私から視線を外した。



弥生さんの手をやんわりと退けると、私は踵を返し仕事に戻る。






「売れるわ。ゾクゾクしちゃう。」

「美月。」

「あはは、分かってるわよ。」



呆れたような弥生さんの溜め息が聞こえ、それを払拭する美月さんの笑い声。


何の話かはさっぱりだけど、どうやら二人の会話を聞いていると友人ではあるらしい。




ふいに時計を確認すればまたピアノを弾かなければいけない時間だった。今日はこれが最後。


弥生さんが気付いていなければいいな、なんて思ったけど。




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