優しいなんて、もんじゃない



チラリ、弥生さんが一瞬私へと不安げな視線を移したがまた直ぐにそれは藍へと舞い戻り。



「…あの子。」

「あの子って、…ど、の……は?」

「………何?」

「え、まさか……お前なの?」



私を指さした弥生さんに釣られるようにこちらへと振り返った藍と、当然視線はぶつかる訳で。

何だその疑い90%みたいな視線は。




ピアノ弾く弥生さんのいとこが、私だったら何か問題でも?


と。


睨む私とは対照的に、藍はその瞳に挑発的な色を混じらせてくるもんだから少し身構える。




「今日、美月も誰も返事聞きに来れないらしいからさ。親切な俺が来てやったんだよ。」

「……。」

「俺が来たからには、良い返事じゃねえとぶん殴るぞ!」



お前、どんだけ俺様なんだよ。内心呆れながらもそれは溜め息を吐くことで抑えた。


が、藍の眉間に深いしわが寄ったから結局は同じことだったみたい。



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