優しいなんて、もんじゃない
返事、とはやはり先日の滝さんの言葉へのだろうか。てかなんでこいつが聞きに来るのか、そこが謎だ。
私の心の中を覗いたように、藍はふんと鼻で嘲笑し当たり前のように口を開く。
「菊さんの弟子が、知らないわけねーだろ。」
「………は?」
「あ?」
「……、…弟子?」
「だったらなんだ。」
訝しげに私を見る藍は、何故か舌打ちまで零して溜め息。おい。
まあ、そこは大目に見てやってスルーだ。噛みつかずにおこう。
じゃあ待って待って、菊さんって滝さんの事だよね?え、なにじゃあ藍はピアニスト?
内心プチパニックを起こす私の脳内。嗚呼もう、なんなんだここ最近の私の日常ごたごたし過ぎでしょ。
「菊さんが、弥生さんのいとこに助手お願いしたとか言ってたからどんな奴かと思えば…、はあ。」
「…何よ。何か不満でも?」
「いーやー。べっつにー?」
「(…シバきたい。前髪左右に引っ張って引き抜いてやりたい。)」
「(冗談きちいな、まさかユウの執着してる女とは…。)」
お互い睨み合いながら、自身の心の中で言の葉を紡ぐ。