優しいなんて、もんじゃない
「…おい。」
暫く無言が続き、先に偉そうに沈黙を破ったのは藍だった。
それに「何」と無愛想に返答した私を嫌悪感丸出しで見る藍の端正な顔面に飛んでいきそうな拳を必死に押さえる。
「話がしてえんだけど。」
「、」
「付いて来てくれるよな?」
真顔で、最早有無を言わさないとでも言いたげな態度の藍を私はただ無言で睨み続ける。
なかなか了承の言葉を告げない私に、苛立ったようにまた舌打ち。スタスタと私の前まで歩み寄ると。
「いいから来いやあぁァアァアあぁあ!」
「っ、ぐッ…!?」
一応、女なのよ私も。
容赦も遠慮もない、このクソ野郎、いきなり女相手にラリアットかましてきやがった。
そのまま出口のドアまで引き摺られて行く。
「じゃあ、弥生さん。ちょっと優借ります。」
「ちょ、離せ…!」
「喚くなブス。」
「警察呼ぶぞ変態!」
「誰が変態だ!」
さらに首を締め付けてくる藍の脇腹を肘で思いっ切りついてやるが、鬼のような形相で睨まれるだけで終了。