優しいなんて、もんじゃない



若干涙目になる私の視線が、ふとカウンターにいる弥生さんとかち合う。


彼女は少しばかり寂しげな微笑を浮かべたが、声には出さず「いってらっしゃい」と口を動かした。



それに一瞬どう返せばいいか戸惑ったが、とにかく小さく微笑んで見せ私も口を動かした。




「゙     ゙。」



普通は、場面的に行って来ますって言うもんなんだろうけど。

この時の私の口は、無意識にこう動いていた。




それを見た弥生さんは、ちょっと驚いたように目を見開いたが。直ぐに何時もみたいに顔いっぱいに笑顔を浮かべ。



「優!あんたのことは、あんたが決めな!」



背中を押すような彼女の言葉は、温かかった。

きっと弥生さんは、私がこれから出すであろう答えをうっすら分かっていたのだろう。




店から出た私と藍は、一度横目で視線を交わし無言で歩き出した。



藍の後に着いて歩き出して、ほんの数秒。私達の目の前に急ブレーキをかけてワゴン車が停まった。

吃驚して固まる私の腕を掴み、力任せに引っ張る藍。



「お迎えだ。」

「っ、はあ…?」



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