優しいなんて、もんじゃない
「まあ優ちゃん、取り敢えず乗って!」
「あ、…はい。」
にっこりと微笑む美月さんに反射的にそう返事をしたが、疑問は当然生まれてくる。
どうして、車に乗らなきゃいけないのだろう。藍が話をしたいと言い、強制的に連れ出された。
が。
そこで、なんてタイミングよく美月さん達が現れるのか。違和感を覚える。
自然に眉が寄っていたのか、正面にいるユウが少し困ったような色を表情に孕ませた。
と。
「何でもいーからさっさと乗れ、のろま。」
「…うっせ禿げ。」
「禿げてねーよ。」
「じゃあ禿げろ。今すぐ禿げろ。そしてくたばれ!」
「おし、やんならやんぞ。」
「寄んな触んな喋んなきもい。」
「殺ス…!」
視線を合わせることなく、背後に立つ藍と罵倒を飛ばし合う。ものすっごい殺意を感じるが、それはこっちだって同じである。
やっぱりそのセンター分けの前髪引き抜いてやろうか。
2人して殺意を隠すつもりもなく、小声で「死ねブス」とか「お前が死ね」とか。
恐ろしい会話が幾度となく飛び交う。