優しいなんて、もんじゃない
そんな私と藍を見かねてか、ユウが「もー…」なんて呆れたような声を出しながら私の腕を掴む。
「今のは藍が悪い。謝れ。」
「あァ?んで俺が…」
「いきなり車に乗れって言われて、戸惑うのは当たり前じゃん。それを分からない、お前が悪い。」
「テメェ如きが俺をお前扱いしてんじゃねーよ。」
チッ、と舌打ちをしながらもんのすっごい鋭い目でユウを睨む藍。ユウはと言うと、ふん、なんて鼻で笑ってるし。
ちょっと、火に油注いでんのひょっとしなくてもお前じゃんか。
ゆーっくりと後ろを振り返れば、今にも暴れ狂いそうな藍がギラギラと、まるで獣みたいに目を光らせていた。
これにはさすがに、私も冷や汗ものだ。恐ろしい。
もう帰りたいんだけど、と何だか泣きたいと思う今の状況。
助けて下さい、と視線で運転席に座り真顔でこちらを見ていた美月さんにSOSを飛ばせば。彼女は、ニヤリと微笑し頷いて見せた。
そして、
「おい餓鬼共。スケジュールならいくらでも追加してあげるわよ?」
「「優、早く乗って(乗れ)!」」
…美月さん、貴女何者ですか?