優しいなんて、もんじゃない
直ぐに喧嘩を止めた2人の顔からは焦りが窺え、訝しげに視線を飛ばしてやれば藍が苛立ったように私の背中を突き飛ばす勢いで押した。
それを車内から伸びてきたユウの腕が支える。
「藍、危ない。」
「うっせー。コイツがとろいんだよ。」
「……死ね。」
「おい誰だ今俺の命途切れさすようなこと言ったのは!?」
また一人勝手に騒ぎ出す藍はもう完璧に無視を決め込み、私はゆっくりと目の前の男へ視線を向ける。
柔らかく細められたそれと目が合い、首を傾げられた。
「…何なの、一体。」
「んー…、優、菊名さんに見初められたんでショ?」
「……らしい。」
「………駄目だよ、優。」
「…え、」
「゙こっぢに来ちゃ、駄目。」
ユウの言葉に、ぐっと眉根を寄せた私の耳に届くのは運転席からユウへと飛ばされる怒号。
「ユウ!今回の件には菊にも関わってもらってるのよ、アンタの想いなんて後回しなの!」
「だって、美月…」
「駄々こねるなら、実力を示せ。結果を残せ。」