優しいなんて、もんじゃない
会話を続けながら、私の肩を肘でつついてくる。うざい、こういうとかはしっかりしてるんだからたちがわるい。
もう脱ぐことも面倒だったから、エプロンは付けたままグランドピアノへと歩み寄る。
「いとこさんがピアノ弾くの!?」
「結構上級者よ。」
弥生さん、そんなハードル上げるようなこと言わないでよ。ピアノの位置から弥生さんを睨むが笑顔で交わされた。
はあ、と溜め息を吐き出すと同時に力強く鍵盤を叩く。曲は先程弾いたものとは別の曲を。
楽譜はやはり頭の中に欠けることなく、旋律として存在する。
弾き終わり、肩の力を抜いた私は椅子から立ち上がろうと身体の向きを変え――――――――――――…
「ッ、」
私の真横、覗き込むように指を見つめるソイツに驚いた。