優しいなんて、もんじゃない



美月さんの厳しい言葉にユウは悔しそうに眉尻を下げ、俯き黙り込んでしまう。


無意識の内に「ユウ」と呼んでいた私に、やたらゆったりと持ち上げられた視線の妖艶さに胸が跳ねた。



ドキリ、ドキリ、

うるさい心音に内心舌打ちしながらも、奴の目を見つめ返す。


「…ん?」

「……いや、その…」



こてん、と首を傾げてゆるく微笑むユウ。その男にしては綺麗な手が私の頬へ伸びてきて、優しく撫ぜた。

やけに熱い頬を、ユウの冷たい手が触れたことで口にし難かった想いが溶かされるように自然と零れ出た。




「…よく、分からないけど。私のせいでごめん。」

「…。」

「後、……ありがと、心配してくれて。」



そう、何時もの私なら絶対に有り得ない素直な言葉にユウは驚いたように目を見開いていた。


その反応は私にしても何時も通りではないから、対処の仕方が分からない。



こっぱずかしい、やっぱり言うんじゃなかったと。再び熱を持つ頬を隠すように俯けば、頬に触れていた手が離れる。



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