優しいなんて、もんじゃない



何だかそれが妙に寂しく感じ、離れていく指の先を追うように視線を動かせば、瞬間。


ふわり、優しい温度が私を包み込んだ。



「……反則、でしょ。」

「ッ、」


なに、なんて考える間もなく耳に直にかかる熱い吐息混じりの声に心臓がどうにかなりそうだ。



ユウに、抱きしめられてるんだと認識出来たときにはさらに首に回る腕に力が込められ密着することを余儀なくされる。


ユウの言う反則の意味が分からないけど、取り敢えず今はこの状況から逃げたい。



と。


「イチャつくのはいーけどさ、とっとと車に乗ってほしいんだけど。」


その、背後から冷たく吐き出された声に私は冷静な判断を取り戻す。




そして。


「…っ、変態…!」

「うッ、…痛!」


当然。ユウの腹目掛けて強く握った拳を容赦なく叩き込んでやる。



瞬間的にばっと離れたユウは「鳩尾ィィいいぃ…!」と呻きながらお腹を押さえていた。


少し強く殴りすぎたかな?いや、でもいきなり抱きついてきたコイツが悪いから気にするな私。



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