優しいなんて、もんじゃない



ずっと笑っていた藍は、はーっと大きく息を吐き出すと。


「面白ぇ女。」


そう呟き、ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべたまま助手席から振り返り私を見た。



何が面白いのかさっぱり分からない私は、ゆるく睨むだけに留めその視線を再び窓の外へ。





「(………、…。)」



やっていたのだが。

隣から突き刺さるように向けられている、この視線の重圧はなんだ。


チラッと見てみれば、案の定甘い双眼が無遠慮に私を映していて。それがあまりにも真っ直ぐだから、柄にもなく緊張してしまう。



ユウのほんのりと赤くなっている片頬を見、ひっぱたくのはやりすぎたと少しばかり反省。


ス、と伸ばした手を伏せ目がちにユウが追う。




そっと赤くなった頬を自身の指で撫でた私に、ユウは微細に眉を寄せた。

それは嫌がっている、とかではなく驚いてというのが当たりっぽい。



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