優しいなんて、もんじゃない
―――理由なんて、なくてさ
゙優だから゙、゙好きだから゙、それだけなんだよね。
そう言い、甘さの中にどこか意地悪さを孕ませた微笑を浮かべるユウに私の胸は高鳴りを見せた。
何だ、何だ、こいつの放たれる妖艶とまで言える色気は何なんだ…!
瞬間的、反射的、もしくはこうなると分かって奴はやったのか、必然的。
私の頬にはかかか、と火が点いたように勢い良く赤がのる。それを見たユウが目を大きくして瞬かせたけど、それに答える余裕はない。
「…っ、意味、分かんない…!」
「――優、聞いて。」
「…。」
「優は、゙こっぢに来ちゃいけない。優のピアノは縛られちゃいけないよ。」
「……、…ユウ…?」
少し寂しげに微笑んだユウは、遠慮がちに私の身体を自身の腕の中へと閉じ込めた。
それに吃驚して言葉を紡げずにいれば、車は何時の間にか路地脇に停車していて。静かに美月さんの声が飛んできた。