優しいなんて、もんじゃない
この重たい空気に侵食されてしまったのか、普段なら何ともないのに。眼光鋭く睨まれて怯んでしまう。
藍があまりにも真剣な面持ちだったから、というのもあるかもしれないが。
先に車を降りた藍に続いて、私も後部座席のドアを開けた。
降りる瞬間、ユウが小さな声で「ごめんね」と呟いたけどそれには気付かぬふりで車内を後にした。
ドアを閉めるため、振り返った先に見えたユウは控え目な微笑で手をひらひらと振っていて。
眉を寄せた私から直ぐに視線は逸らされ、ユウは運転席から振り返り゙仕事の目゙をする美月さんと対峙していた。
「優、自販機行くぞ。」
「…一人で行けば。」
「いーから。話したいこともあんだよ。」
「……我が儘。」
「ハッ、餓鬼か。」
とことん人を見下し馬鹿にする喋り方しかしない藍の綺麗な顔面をぼっこぼこにしてやりたいと思ったけど、私だって成人した女だ。
そこはぐっと拳を握り怒りを抑える。
いつか一泡吹かせてやる。