優しいなんて、もんじゃない
「な、」
「お姉さんそこらのプロより上手いじゃん。」
すらすらと紡がれた言葉は、褒めてくれているけど私の警戒心は強まる。
あの距離で、人が立っていたと気付かないなんてそっちの方がびっくりだ。
私の目線には、グレーの帽子から覗く綺麗な茶色の髪と鼻から下しか見えない。
お姉さん、とおそらく私を呼んでいるのだろう。口元に微笑を浮かべたソイツは、膝の上にある私の指に自分の手を重ねてきた。
あまりに突然のスキンシップに私は肩を揺らす。
…何、こいつ。
目が見えないだけに、なんだか怖い。眉根を怪訝に寄せて男を睨むと。
「その目、もえるよね。」
「は?」
「睨まれてるみたいで、いい。」
みたいじゃない。睨んでるんだよこの変態が。
初対面相手にいきなり変態(しかもドM)発言ぶっかますなんて頭のネジ緩んでんのか。