優しいなんて、もんじゃない
藍も、早急に言葉を紡ぐことなく。暫く視線で空を仰いでいた。
ミルクティーが、丁度半分になった頃。
「…なあ、優はさ。アイツのことどー思ってる訳?」
「……それは、あのドM野郎のこと指してる?」
「ああ。そーだな。」
「………どうも、思ってないんじゃない?よく、私自身分からない。」
そう言い、またミルクティーを飲む私を少し驚いたように見る藍はどうしたというんだ。
藍がやたら真剣な顔するから、内心ヒヤヒヤしたりもしたのに。言いたいことというのは、こんなくだらないことだったのか。
だったらがっかりじゃないか。
藍に残念がっていることが表情に出てしまっていたのか。青筋たてる勢いで般若顔の藍が私を睨んでいた。
そんなに怒ることでもないだろうに。謝るのは嫌というか無理なので、睨み返して応戦。暫くその状態が続き、お互いにやめたと言わんばかりの盛大な溜め息でその場は収まった。
藍は風に揺れて目にかかるセンター分けの前髪を鬱陶しそうに払いながら、眼光鋭いままに私を見据えた。
「厄介ごとが嫌なら、ユウから離れろ。」
「…、」
「執着しちまってるから、アイツ。」
「……別に、」
「こればっかりは、簡単に済まされねえんだよ。」
別に関係ない、と逃げようとした私の声は最後まで吐き出すことなく藍の言葉にのまれてしまった。